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聖三一幼稚園(幼稚園型認定こども園)

2018年 京都市中京区聚楽廻中町45

礼拝堂とイチョウのあるこども園

建替による園舎の耐震化にともない、幼稚園型認定こども園へ移行した園舎、園庭の設計です。

幼稚園は京都聖三一教会の付属施設です。国登録有形文化財である教会の「礼拝堂」があり、

「中京区・区民誇りの木」である雌雄の「イチョウ」が園庭の中央に位置しています。

新園舎はそれら既存の礼拝堂とイチョウに連続し、取り囲むように計画しています。

園舎は礼拝堂を参照し、外構フェンスは聖書にでてくる動植物をモチーフとして、デザインしています。

園庭には広さに限りがあったので、園舎とひと続きのだんだんデッキを設けました。

園児たちが走り回り、遊ぶことができ、イチョウにより近くで触れ合うことができる遊具として活躍しています。

京都聖三一教会

・歴史ある地、教会...そして礼拝堂

 京都で初めての日本聖公会に属するキリスト教会です。

 平安京豊楽院の跡地であり、秀吉の聚楽第の南西側にあたります。

 現在の地名「聚楽廻」に、その名残りがあります。

 【年表】

 1898年 京都市烏丸下立売に京都聖三一教会として発足

 1930年 現在地に礼拝堂を建設し移転

       基本設計 園部秀治兄(信徒)  

       設計   John van Wie Bergamini(ミッション設計技師)

       施工   棟梁 宮川庄助の施工で完成

       ・木造二階建

       ・洋風の中に和の技法を忍ばせた2×4(枠組み壁構造)方式

       ・1階 幼稚園

       ・2階 礼拝堂(ニコルス監督により聖別)

 1932年 聖三一幼稚園の開設

 1977年 幼稚園教室などを新築。教会部分の増改築を行いほぼ現在の姿となる

 1999年 礼拝堂:(国)登録有形文化財

 2015年 礼拝堂:京都市景観重要建造物

 

聖三一幼稚園+牧師館

 ・「耐震化」と「幼稚園型認定こども園」への移行

 建替前の園舎(1977年築)は現行の耐震基準を満たしていなかった。

 法人側で耐震化のため、数年をかけて耐震診断、補強の検討をされていたが

 建替が合理的との判断となり、今回の園舎の建替となった。

 建替にともない、幼稚園から「幼稚園型認定こども園」へ移行することとなり

 35歳児の保育室に加えて、12歳児の保育室の設置が求めらることになった。

・面積の確保

 計画にあたっては法令により収容人員に対する各諸室、園庭等の面積を確保することが求められる。

 一方、園庭には礼拝堂建設当初から植えられ、現在は「中京区・区民誇りの木」となった

 雌雄の大イチョウがある。その根を傷つけないように、できるだけコンパクトな配置計画を求められた。

 一方高さ制限もある地域なので、3階建て10M以下で高さを押さえ、かつ、

 礼拝堂に連続した屋根を設け1フロアの面積をどうコンパクトにするかということが設計上の大きなポイントになった。

・構成

 1階を職員室、遊戯室、3歳児室。2階を45歳児室と厨房。3階に12歳児室と牧師館を設けてる。

 階上の厨房にはダムウェーターを設置し、全階への配膳をスムーズにしている。

 3階には聖公会の牧師が住むことになる牧師館もある。

 職員室は入り口が見えるような配置とし、死角になる箇所には防犯カメラでセキュリティを補完している。

 こども達のアプローチはピロティとしたり、大屋根を設けている。

・礼拝堂との連続性

 礼拝堂から連続する勾配屋根が、園庭をL字型で囲むような構成としている。

 さらに連続するように付属させただんだんデッキが、園庭を取り囲み

 1階の園庭・ピロティ、2階のテラス・だんだんデッキ、そして3階のルーフテラスと、

 形態としてもアクティビティとしても連続するようなデザインでありプランとしている。

 屋根勾配や装飾三角窓の勾配、格子のピッチ、また各所に散りばめられた葡萄や羊、

 十字架などのモチーフを引用しながら、全体の、また細部のデザインを構成している。

・園庭⇄「だんだんデッキ」⇄ルーフテラス~遊びまわれる園舎

 園庭は運動会にも使われる。計画時はこの広さの園庭が運動会で使われているのかと驚いた。

 親や祖父母で溢れかえるとのことだったので

 だんだんデッキやテラスを複層にわたる観覧席として構想した。

 本計画の売りでもある「だんだんデッキ」は雄の大イチョウを取り込み、

 園庭、2階、3階へのテラスとつながっている。

 こども達が走りまわる、遊びまわれる場所とすること、

 敷地を端から端まで走りまわるための装置としている。

・構造と工法~現場でのフレキシビリティ

 計画地は前面道路が狭く、また工期、工費を勘案し鉄骨造としている。

 だんだんデッキは雄のイチョウを取り込み、園庭を取り囲むような配置としているため

 現場で掘り方をした際に、広がった根を避けられるよう、

 その際に大きくデザインや構造計算が変わらないように、三角平面を組み合わせた計画とした。

 予想通り、根は縦横無尽に伸びていて、現場では基礎形状やスパンの調整、

 それにともなう鉄骨断面の再確認や検討を行った。

 アプローチのテラスはRCのフラットスラブで構築し、天井高さを確保し、

 メンテナンス性を高めている。

・祈りと感謝

 初めての経験となるこども園の設計でした。

 私たちの可能性にかけていただいた教会、園の関係者の皆様には感謝の念がたえません。

 設計中、工事中は関係者の皆さんから暖かく見守っていただきました。

 様々なフェーズで、大小さまざまな問題がありましたが

 園にかよう子供達の応援や祈りに包まれたおかげで、

 予定通り完成にたどりつくことができたことが、何よりの達成感でした。

 使い始めてからも、さまざまな出来事がおこっていますが

 これからも充実した園になるように関わり、祈っていきたいと思います。

 

概要

建築面積
563.7㎡
延床面積
655.72㎡
敷地面積
981.73㎡
規模
3階建て
構造
鉄骨造
用途
幼稚園型認定こども園
プロデュース
アイアンフェンス:element猪原秀彦
構造設計
(合社)一級建築士事務所アトリエSUS4
施工
(株)高橋工務店
撮影者
冨田英次