馬見丘の緑陰
敷地は三角形で南向け斜面地。ただし斜面をあがってしまえば、北向きではあるけれど馬見古墳群のなかでも最古の佐味田宝塚古墳(4世紀後半)と隣接する公園や池が、樹木のむこうにひろがっている。市街地調整区域でもあるこの隣地は将来にわたって建物がたてられる可能性の少ない風景である。
また敷地近隣は高級住宅地であるが、特殊な敷地形態のためか比較的安価であり長年売れ残っていたようだ。クライアントも第一印象はよくなかったようであるが、敷地傾斜をのぼり、北側風景への眺望を見てこの敷地の購入を決められた。土地代が安価な分を造成費に割り当てても資金に余裕が出ることも購入決意のひとつでもあった。要望としては、当然のことながらこの風景を活かした設計としてほしいということであった。
われわれにとっては料理のしがいのあり、モチベーションのあがる敷地形態である。なにしろ土地代を削って、建築に費用をかかかるかもしれないが、設計の工夫でなんとかしてくれという内容である。さらに古墳側への眺望とブラインドレスな空間づくりの可能性も容易に予見できる。
ここに三角形の平面をもつ地下1階地上2階の木造住宅を立体物を斜面に置くような形態で設計した。敷地平面形状により間口が大きくなってしまうことから周囲の住宅とのスケール感を大きく逸脱しないよう、高さを抑えた設計している。道路レベルからは地下+平屋に見え、また太陽光発電パネルが見えないように2階の配置と屋根勾配を決定している。2階リビングの天井高さも梁下の低い所で1600ミリと極端に抑えた高さにして、全体のプロポーションを整えるとともに1階スタディスペースとの一体感を生み出している。リビングとそこに連続するテラスには古墳と公園の風景がひろがる。また薪ストーブや太陽光発電設備といった新旧の設備を備え、歴史と現代をさまざまなレイヤーで感じられる住まいになったと思う。
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